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コトハと手を繋ぎ、桜の神『桜華』のいる場所を目指す。コトハは機嫌良く、耳を立て尻尾を揺らしながら、少し調子っぱずれに歌を歌っていた。 そんなコトハが可愛くて、浅葱は目を細め見つめている。 これがただの散歩なら、と思わずにはいられない。コトハとの初めての『お出かけ』は十六夜に取られてしまったが、それでも自然と緩む頬は抑えられない。 もう一層の事、桜華のことは忘れてコトハと散歩だけしてしまおうかとも思う浅葱だった。 浅葱自身、桜が散ろうが枯れようが、知ったことではない。ただ、それが原因でコトハが逆恨みを受ける可能性があった。 確かに、無理に結界を破ったのかも知れない。だが、元はと言えば桜華が閉じ込めなければ良かった話なのだが、そんな理屈が通る相手ではない。 桜華は自尊心が高い。神はそう言った者が多いが、特にプライドが高く扱い辛い。そこがいいと言う者も居るのだが、浅葱的には関わりたくないのが本音だ。 チラリとコトハを見る。コトハは、浅葱と目が合うとニッコリと微笑んだ。 (嫌だが、仕方ない。全てはコトハの為だ。帰りに違う公園にでも行き、コトハと遊ぼう) 高宮のことは気になったが、そのくらいの楽しみがなければやってられないと、頭の中から追い出した。 ーー公園に入ると、大きな桜の木が目に入ってくる。 (ああ・・・これは) 今が盛りと咲いている筈の桜の木は、見事な葉桜になっている。 (十六夜が慌てる筈だ) 「きれーなおはな、ナイナイだね」 シュンと尻尾を垂らしたコトハの頭を撫でてやる。 「ごめんなさい、しような」 「あい」 頷くコトハを抱き上げる。そうして、浅葱は木に触れた。 『桜華、浅葱です』 『浅葱様』 涼やかな声が頭に響く。音が遮断され、キンと耳鳴りがした。軽い眩暈に頭を振った。
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