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「浅葱様」 上座にある御簾向こうから桜華の声が聞こえた。浅葱はコトハを下ろし、向かい合うように座った。コトハも、浅葱に倣い正座をする。 (可愛い) ちょこんと座る仕草に、頬が緩む。 「浅葱様、いらっしゃると思っておりました。でも、何故その者も一緒に?」 1人で来なかったことを責める口調に、コトハがピクリと肩を震わせ萎縮する。 浅葱は大丈夫だと背中をそっと撫でてやる。不安そうに見つめる瞳に微笑んだ。 「お久しぶりです。桜華」 「お会いしとうございました。近くに居るのに、全然お越し頂けないから・・・拗ねておりましたのよ?」 「申し訳ございません。只の妖風情が、神の元に足繁く通う訳にも行きませぬ故」 「私はそのような事、気にしないと申しましたのに」 浅葱はチラリとコトハを見る。緊張に顔を強張らせた様子を見、早めに切り上げて帰った方がいいと、判断した。 浅葱は居住まいを正し、桜華を見た。 「昨日は、私の身内の者が大変失礼を致しました。大切な桜を散らしてしまったと聞き及び、馳せ参じた次第にございます。どうぞ、桜華様の寛大な御心で、お許し頂けないでしょうか」 コトハに手を添えて促す。 「ごめんなちゃいなの」 「私の結界を破ったのは、十六夜という従者ではないのですか?」 桜華の不審気な声が響いた。 「いちゃいは、ちあうよ?」 コトハの言葉に桜華が目を瞠る。 「まさか、その獣が・・・本当に、私の術を?」 桜華が浅葱に問うように見ると「はい」と返事を返す。 「申し訳ございませんでした」 浅葱が頭を下げると、コトハも同じように頭を下げた。
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