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健太のプロポーズから1週間が過ぎた。
相変わらず吐く息は白く、身を刺すような寒い日が続いた。
春が来たら式を挙げよう。
そう言ったのは健太だった。
2人は3月を目安に、籍を入れることや式のことを決めていた。
籍を入れる日の前日のことだった。
その日は沙織の仕事が休みだった。
健太も昼で仕事が終わり、帰宅した午後2時頃。
沙織が突然
「あっ。」
っと、声を上げた。
「どうしたの?」
と、健太が聞くと、沙織は朝行った買い物でリンゴを買い忘れたと言った。
「なんだ、そんなことか。」
健太が呟くと、沙織は困った顔をした。
「リンゴが無いと困るの…。今日の夕飯に使おうと思っていたから…。
仕方ない。ちょっと買ってくるわね。」
「こんなに寒いのに?いいじゃないか。今日は一緒にゆっくりしよう。」
だが、健太の誘いにも沙織は首を横に振った。
「今日は絶対にリンゴが必要なの。30分くらいで帰ってくるわよ。」
そう言うと、沙織はそそくさとコートを羽織りマフラーを巻いた。
ベージュ色のコートに白いスカートがひらひらと揺れていた。
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