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あの日から、健太の中であり得ないほど早く時間が過ぎた。
沙織のお通夜、葬式が終わり、健太は無理矢理日常へと帰された。
それから健太は、毎日後悔して過ごしていた。
あの時、自分が沙織を止めていれば…。
あの時、一緒に行っていれば…。
毎日毎日そんな事を考え、仕事が全く手に付かなかった。
そんなある日、健太を見かねた同僚の1人がタバコを咥えながら話しかけた。
「吉田。大丈夫か?」
「うん、大丈夫…だよ…。」
「あのさ、こんな時に言うのもちょっと変だし、お前の気がおかしくなると嫌だから言うのを渋っていたんだが…。」
「なに?どうしたの?」
「これは、今ウワサされている都市伝説なんだけれどな?
お前の最寄駅あるだろ?
あの駅の近くに、看板のない喫茶店があるらしいんだ。
そこには髭の長い、丸眼鏡をかけたマスターがいて、客の懺悔を聞いてくれるらしい。
お前、彼女さんの事で後悔しているんだろう?
たぶん、俺らには話しにくいと思うし…。
1度そこで話を聞いてもらえよ!
話せば、ほら、少しは気持ちも軽くなるかもしれないし…。」
同僚の言葉から健太は少し間を開けて答えた。
「ありがとう。探してみるよ。」
その言葉を聞き、同僚は少しホッとしたように頬を緩ませ、自分のデスクに戻って行った。
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