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何時の間にか、強くてしなやかな心を持った大人の女に為れたと、感じている。
「分かったよ。麻紀」、素直に受け入れる桜子の言葉に、父が泣いている。
取られた手を強く握り返して、微笑んで言ってみた。
「お父さん、花婿の所まで連れて行って」
父と歩むバージンロードの先で待っている晴臣に、魔女が不敵な笑みを投げた。
「これは、嵐の予兆だ」、と晴臣が小さく呟くのを、桜子は聞き逃さなかった。
「解っているじゃ無いの」
魔女の呟きが、麻紀の耳にも届く。
許された感激に咽ぶ両親には、新しく生まれた桜子という名の魔女の恐ろしさは、まだよく解っていない。
麻紀は、とにかく無事に結婚式が終わる事を、真摯に神に祈った。
ベールを上げて、花嫁に誓いの口づけをしながらも、晴臣は喜びを隠し切れない。
「何と言われようと、神の前で、桜子に誓いの言葉を言わせた」
今まで、どんな事をしても、欲しいものは手に入れて来た。
これで完全に、僕のものだ。
晴臣の、勝利宣言だった。
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