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麻紀は続編を読んで、本当に驚いていた。
只の人気作家から、本物になろうとしている桜子の新作。
続編の枠には収まり切らない、凄い出来だと思った。
この小説の中には、恋に生き、夢を追いながら、逞しく生きようとする女が描かれていて、娯楽ものから一歩踏み出して人生を語っていると思う。
「それで、晴臣さんとはどうなの」
読み終わって、どうしても聞いて見たくなった。
この小説の中の男は、何処から見ても晴臣の事だと分かる。
赤くなって恥ずかしそうにするから、意地悪く聞いてしまう。
「もしかして、彼の事が最初から好きだったの」、文月はもう真っ赤で、見ていて面白過ぎる。小さな声で答えてくれた。
「好きじゃなきゃ、寝たりしない」
「だよね。夏彦がどんな目に会されたか見れば、やっぱりと思うわ」、二人は目を合わせて、吹き出してしまった。
そこで、麻紀は思い出した。
「そうだ、夏彦を如何にかしないといけない」
晴臣の妻に手を出したりしたら、本当に命が危ない。
欠陥だらけの変態だが、あの才能が無くなるのは惜しい。
「夏彦め、何処までも面倒な奴」
呟きながら思い悩んでいるらしい麻紀を見て、もしかしたら夏彦が結構好きなのかも知れないと思った。
出版社に続編の話をしてもいいかと聞くから、コピーを渡して麻紀を送り出した。
桜子は書斎に戻ってきて、晴臣の面白がっているらしい姿を見つけて驚いた。
「お帰りなさい」、少し警戒してしまう。
いつから居たのだろう。どの位、麻紀との話を聞いていたのか気に掛かる。
「僕を最初から好きだったなんて、知らなかった。君は酷い女だ」
魔女の慌てぶりが楽しい。
早目に帰って来て、麻紀が訪ねて来ていると聞かされ、邪魔しないつもりだった。
でも少しだけ覗いて見る積りだったが、挨拶出来なくなった。
桜子の声が言っているのを、聞いた。
「好きじゃなきゃ、寝たりしない」、胸が熱くなる。
おもわず抱き締めたて、髪に顔を埋めて囁いた。
「僕もだよ。どうしても君が欲しかったからあんな条件を出して捕まえた」
そのまま抱き上げるから、彼女は思わず言ってしまった。
「床は痛いから、いや」
彼が笑って囁く。
「この前はそんな文句は言わなかった。愛が少なくなったのかな」
「意地悪」
赤くなった魔女をまた寝室に閉じ込めて、愛した。
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