殺人ギャンブル"第1レーン"

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 「お集まりの皆さま、本日から七日間、この豪華客船"ぼうめい号"で過ごして頂きますが、その前に皆さまが社会に貢献された輝かしい功績をご紹介させて頂きます」  船内の食堂にどこからともなくアナウンスの声が鳴り響いた。  「杜倫子(もり ともこ)様。ご自身が院長を勤めるクリニックでは、患者に恐怖症などと向き合わせることで、克服に導いてこられました。また、あなた様の患者は、大勢が院内でショック死しています」  「私が殺したと言いたいの?」  精神科医、杜倫子は訊ね返した。  「続いて金山晃弘(かなやま あきひろ)様。死刑囚の臓器を競売にかけて、競り落とされたものから摘出し、買い手に渡すことで大勢の病人の命を救って来られた反面、大勢の囚人を殺害しています」  「彼らは死刑を受ける運命でしたが」  眼鏡をかけた小柄な紳士、金山は鼻で笑った。  「次に篤意初夏(あつい しょか)様。お勤めの分署では、故人の肉体でウイルスを培養したものを冷凍保存して研究され、新薬を開発されようとしました。研究していた分署では新型のウイルスが流出し、大勢の職員が感染し、苦しみました」  「研究は犠牲が付きものなんだけど」  初夏は俯きながら呟いた。  「高柳義昭(たかやなぎ よしあき)様。迫真性と臨場感のある作品作りの為に、実際の殺人を行い見事に作品に活かしてらっしゃいます。作品内の犠牲者の数は実際の犠牲者の数と一致します」  「嬉しい誉め言葉をどうも」  高柳はジャケットのポケットからスマートフォンを取り出そうとするが、スマートフォンは無かった「あれ? スマホがない」  「黒山玲香(くろやま れいか)様。勤務先の高校では、解けなければ死ぬ呪いの受験問題があると生徒を恐喝し、生徒さんの成績を上げて名門大学に入学させた快挙がございますね。反面入学出来なかった生徒は受験問題の呪いに怯え、集団自殺しています」  「マスコミにも言われました」  玲香は深く溜め息を吐いた。  「最後に豊見山高志(とみやま たかし)様。かずかずの新興宗教の本拠に放火し、お一人で宗教弾圧をすることで、マインドコントロールされた信者達を解放して来られました。一方で焼き討ちにあって焼死した信者も大勢います」  「俺は宗教なんて嫌いなんだよ、で、こんなイカれた奴らとどう過ごせと言うんだよ?」  豊見山は食堂の五名を見回した。
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