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 時刻は二十三時を越えるが、いくつもある窓のカーテンの隙間からは灯りが漏れていた。その建物の入り口上部には【永友の会】と書いてある。  建物を取り囲むようにして、目的を同じくした数十名が立っていた。【永友の会】を睥睨しているが、瞳には嬉々の光が差している者も多かった。 「さて、今回は一人殺す度に五ポイントだ。準備はいいか?」  耳を隠すくらいに髪を伸ばし、無精髭を撫で続ける中年の男がそう言った。連中をまとめあげる大神創だ。  創の言葉に対し、彼らは小さい声で思い思いの言葉を吐く。「オウ」「大丈夫です」「腕が鳴るぜ」といった感じである。中学生の男子もいれば、杖をついた老婆もいる。彼らは誰一人として、この不思議な光景をおかしいと思っていないのだろう。 【永友の会】は出会った人々を全員友達として扱い、誰であっても愛し助けよという精神を持つ新興宗教団体。そして【永友の会】の前に立つのもまた別の宗教団体だった。 「俺たち【OSF(ワンセルフフェイス)】の恐ろしさ、とくと知らしめろ」  創が親指と中指を弾き、夜空高くその音を響かせた。刹那、闇に溶けこむ黒い群れが静かに動き出す。一人として声を上げず、波のように、ゆっくりと忍び寄っていった。  建物の入り口には鍵が掛けられているものの、それを一瞬で解錠した者がいる。ナンバーフォー、赤築地球(あかつきてら)だった。真っ黒な長髪を揺らし、彼女は慎ましやかに立ち上がる。白い半袖のカットソーと黒のサブリナパンツ。メガネをしているが、服装と楕円形のメガネからは、知性よりも性格的な棘の方が印象に強い。背は低く、中学生、ときに小学生に見紛うほどだ。
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