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世間一般にはたくさんの新興教があり、さまざまなモノを信仰している。有名な神様であったり、でっち上げの神様であったり、現存する人間であったり、いるはずのない歴史上の人物であったり。悪徳商売としてのさばっている宗教もあるが、清廉潔白な宗教も当然存在している。
悪徳な新興宗教に対し、梶木久は常々考えていた。気持ちの脆弱さにつけ込まれ、心の闇を暴かれて、上手く使われているのではないか、と。
宗教は一種の薬物だとも思ってる。依存し、信仰によって心を満たす。それはタバコや大麻、覚せい剤と同一視してもいいのではないだろう。なぜそれが許されてしまっているのかと一人で嘆く。
その中でも、大神創を教祖とする【OSF】は異端であった。
悪徳宗教を根絶やしにするために動く。だが、その存在を暴かれたことはない。「ほら、お前も行けよ」
そんな久もナンバーナインと呼ばれていた。
宗教団体【OSF】は、ワンからナインまでのナンバーズという幹部がいる。創をトップとし、その下は皆が同じ権力を持つ。ナンバーワンの創だけは別格だった。
「幹部にポイントは入らないだろ?」
OSFは、組織に貢献した分だけポイントが貰える。ポイントの数値は創が決める。そのポイントがある程度まで貯まると、現金としてキャッシュバックされるシステムがあった。
一ヶ月の集金は一人一万。OSFの会員は全国で二百人を越えるため、一ヶ月でニ百万以上の収益がある。けれど、キャッシュバックシステムによって、徴収された金を取り返せるのだ。逆に組織から搾取することも充分できる。
「それでも幹部だ。示しがつかない」
そう言って、創はセブンスターを咥えてに火を付けた。場にモクモクと漂う紫煙を、久は苦い顔をしながら手で散らす。
「わかったよ。いけばいいんだろ」
既に【永友の会】の建物の中では大量殺人が行われている。誰がどれだけ殺したのか、どれだけ貢献したのかは他のナンバーズが目を光らせていた。自己申告ではなく、幹部がしっかりと見ている。つまり貢献度とは、組織に対して有益な行動を取ること。尚且つ幹部に義理立てしなければいけない。
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