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評価されねば生きていかれず、媚びを売らねばマージンは得られない。面倒な社会の縮図がそこにはあった。
入り口を抜けると、鼻腔を刺激する鉄の臭い。生臭く、不愉快だと言わんばかりに久は顔をしかめた。
ゴリッゴリッと、なにかが骨を砕こうとする音が聞こえた。視線を左に向けると、その部屋には五人の仲間がいて、永友の会の会員を殺していた。手にはノコギリ、トンカチと武器はさまざまだ。
それでも尚、彼は歩みを進めた。
くぐもった女性の悲鳴を聞き、今度は右に視線を向けた。六人の男が、若い女性たちにのしかかっている最中だった。
「おい、強姦は許容してないだろ」
声を掛けると、六つの背中は跳ね上がる。
「そ、そんなこと言わないでくださいよ。たまにはこういうご褒美があってもいいじゃないですか」
小太りの中年が、贅肉を揺らしながらそう言った。
OSFは基本的に自由だ。納金して、集まりに参加すること以外は。けれど、殺し以外の犯罪に対しては峻厳であった。
【殺しは俺たちに必要だ。フザケタ宗教を根絶やしにするには、これしか方法がない】
それは【OSF】に加入するとき、信者全員に告げられる忠告だった。
「舐めてんのか? OSFはそこまで寛容じゃない。それは知ってるだろ」
見下ろせば、額に脂汗をかく男たちが鼻を鳴らしていた。
「おい、コイツらを確保しろ。あと、頭をパーにしてやれ。ヘロインとケタミン。あとはそうだな、マジックマッシュルームあたりをテキトーに混ぜて食わせろ。腹が膨れるまでな。あとは覚せい剤、シャブとモルヒネ、ドラゴンを静注だ。人格障害になる程度だから、その後の判定はお前らに任せる。テラにでも言えば用意してくれるはずだ」
「わかりました」
幹部の久たちは、最低十人の直近の部下がいる。彼らに命令し、六人を羽交い締めにした。
「や、やめてください! 謝ります! 謝りますから!」
額を床に擦り付けて懇願していた。その姿は非常に醜く、見るに耐えないとツバを吐き捨てた。
「黙れ、クソ野郎」
鳩尾を思い切り蹴りあげると、中年はヒューヒューという呼吸を繰り返す。一発では収まりがつかないだろうが、今後のことを考えるとこれくらいにしておく必要があった。
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