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鏡には大量の髪の毛を頬張る僕が写っていた。
この時、僕は初めて知った。
「髪の毛って、美味しいんだ」
その後は大変だった。
クラスのマドンナを振ったことでひと騒動。
地味なさわ子と付き合いことで周りが騒ぎひと騒動。
どんどん髪が短くなるさわ子の顔がみんなに見える様になった時、ショートボブになったさわ子が意外と可愛かった事にひと騒動。
彼女の実家は理髪店で、中学生のとき、たまたま口に入った髪の毛が意外と美味しいことでこの髪の毛は食えるという事実を知ったらしい。
しかし、それを言っても信じてもらえず、だれとも分かち合えず、自分はおかしいのだと、卑屈になっていってしまったらしい。
今はすっかり明るくなり、今の髪型が気に入っているため自分の髪を僕にあげられない事を申し訳なく思っている。
それが辛い時期もあったが、今は満ち足りている。
あれから僕は勉強し、今は美容師として店を持つまでになれた。理容師仲間と酒を飲みながら、何故美容師なんか目指そうと思ったんだ? なんて話になると、ふと解る事がある。
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