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海の上を少女が水色の長い髪を海風に靡かせて歩いていた。
その顔は端正で、月明かりに照らされた服装は蒼のとんがり帽子と短い丈で同色のワンピース。手袋やブーツも全て統一されている
無表情なのもあり、まるで人形のようだ
しかし・・・穏やかな海風は徐々に血の匂いを漂わせ始め、その元凶は少女の領域の海で起きているようであった
彼女は表情を変えずに己の領域を荒らす因子を排除するため、その手に天体儀を頂点に飾った身の丈よりも長い銀の杖を顕せて海を駆けた
そして同時刻、同じ海の上に一人の青年が逃げるように長い銀髪を煌めかせて駆ける
その後ろには数十人程柄の悪い男達が罵声を飛ばしながら、青年を追っていた
埒が明かないと思ったのか、男の一人が銃を青年へ向けて射つ。弾が左肩を貫通し、その激しい痛みに青年は海面へ倒れる。そこへ男達が距離を詰めた
男A「漸く追い詰めたぞ・・・さあ、我々と共に来て貰おうか?狼国の第一王子、ヴォルフ=アージェント!!」
アージェント「狼国が奴等の者になるぐらいなら、今この命を絶つ!」
隠し持っていたナイフを男達が慌てる中、首へ当てようとしたその時
?「そこの青年。その命を捨てるなら、私が貰い受けたい」
突如響いたのは澄んだ抑揚の無い声。振り向けば、そこには先程の蒼い少女がいた
満月を背にして立っている彼女は幻想的で、思わず見惚れてしまう程だ。少女はそれに構うこと無く続ける
?「貴方達、退きなさい。私は彼に用がある」
その言葉が頭に来たのか、男達は武器を構えて抵抗の意を示す。それを見た彼女は歩きながら彼らに向かって一言呟いた
少女「凍りつけ、砕け散れ」
刹那、アージェントと少女を除く全員が氷の彫像のようになったかと思えばこなごなに砕け散る
血色の氷が舞い散る中、少女はアージェントの前へ来ると手を差し出した
少女「このまま死ぬか、私の手を取るか選びなさい」
アージェントは霞んでいく意識の中で、彼女の手を辛うじて掴む。その手を握り返した少女の声が遠くに聞こえる
少女「この手を取ったなら、今からお前はーーーー」
その言葉を最後に、アージェントは意識を手放した
それを見た少女は自分よりも長身な彼を軽々と担ぎ上げて、月の光を浴びながらその場を去っていった
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