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やっぱり最悪の上司だ。
意気揚々と張り切っている新人に最初の仕事に珈琲を入れろだなんて、時代遅れもいいとこだ。
詩織は腹を立てながら給湯室へと向かった。
前回研修で来たときに鬼束のマグカップがどれか習い、気に入りの手帳に書き込んであったのを思い出してページを開き食器棚から彼のマグカップを取り出した。
怒りをコーヒーの隠し味にして、鬼束の書類が散乱している中にわずかに空いていたスペースに「どうぞ」と言って押し込むようにカップを置いた。
鬼束はそれを全く気にすること無くまた「ああ」とは言ったが詩織の方など一切見ずにマグカップを口に運んだ。
一口飲んでパソコンに向かったが、鬼束は何かに気が付いたようにマグカップに目を向けて、更に一口二口と続けて飲んだ。
詩織はそれを見て、どうだ参ったかと心の中で勝ち誇った。
コーヒーメーカーでもここまでうまく作れるんだから。
ざまあみろと心の中で精一杯舌を長く伸ばしてアカンベーをした。
その悪いこと考えてるのが思わず顔に出てしまったのを、鬼束は目敏く見付けたが、少しばかりばつが悪そうに「確かにうまいな」と言いながら付け加えて「今はまだ手が離せない、お前の席の隣の芹澤に聞きながら適当にやってくれ」と言った。
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