ジャスミン

エピソード 0 ボルドーの手帳

とぼとぼと自分の席に戻ると、向かいの席からチラリと見覚えのある手帳が見えた。

思わず、あっと声を出すと同時に鬼束が目を細くして睨み付けてきた。

彼女の隣に座る彼の同期だという芹澤もまたくくっと笑いを押し殺しながらこちらのやり取りを見ている。

鬼束に聞くよりも芹澤の方が良いかと彼に助け船を求めて困ったように視線を送ると、鬼束は咳払いをしながら手帳の中の、あるページを開き差し出してきた。

目に飛び込んできたその場所を見て彼女は硬直した。

全て見られても大丈夫と思っていたが撤回だ。

オニツカと派手にデコレーションした横につい鬼が怒ってるイラストまでつけていたのをすっかり忘れていた。