プロローグ

2/4
2427人が本棚に入れています
本棚に追加
/652ページ
ピーーーーーーーー 甲高いホイッスルが試合終了の合図を告げて詩織は我に返った。 呼吸をすることも忘れて見入っていたことに気付いて大きく息を吐き出した。 そしてとても大事なことを思い出した。 そうだ、お兄ちゃんの試合はどうなったの? 慌てて兄の姿を探して見つけ出したが、その瞬間そのコートでも終わりの知らせが鳴り響いた。 あちゃー失敗した。 兄の高校生活最後の試合、しかも全国大会ということで家族総出ではるばる北海道から来たというのに、兄のチームがタイムアウトをとってから何の気なしに隣のコートへと目をやるとほぼ後ろ姿しか見えないが二番の背番号の人にだけやたらと惹き付けられる。 目が勝手に追い掛け回していた。 頼もしい後ろ姿に、もっとあなたの活躍を見せてとドキドキしながら一瞬も目が離せなかった。 相手チームもさすが全国大会だから強いらしく、なかなかの接戦で見ているこちらまで熱くなる。最期は長い間ラリーが続いたが、もう少しのところで手が届かずにボールが虚しくバウンドして転がっていった。
/652ページ

最初のコメントを投稿しよう!