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小袖の襟に両手をかけると、それをそっと左右に開いて胸を露にした。
掌を当てて瞼を閉じる―――が、やはり何も感じられない。
そこからさらに下へと手を滑らせて、鳩尾の辺りを探ってみる。烏帽子を外した晴明が、その額を博雅の腹部に直に押し付けた。
―――何も、ない。
博雅の肌に頬を押し付けたまま、晴明が唇を噛む。
これほどまでに、呪の痕跡がないとは、いったい?
「道摩法師とやらから手繰る他ないか……」
博雅の身体の両脇に手をついて身体を起こす。
ふと見下ろせば。
閉じられたままの瞼。薄く開いた唇。緩やかな呼吸に上下する胸。
掻き開いた衣の合わせ目から色づいた突起が見えた。
……埋まったままのそれを、歯と舌で掘り起こしてみたい誘惑に駆られる。
今度は違う意図を持った指が、肌蹴たままの博雅の胸に落ちた。包み込むように撫でた掌が首筋へ上がる。
うなじの後れ毛を指先で掻きあげた。
「……博雅」
耳朶に鼻先を寄せる。
―――?
ふと違和感を感じたのは、何故だったろう?
「博雅……?」
身を起こして目を眇めた晴明が、博雅を見下ろした。
「そろそろ中に入らぬか」
庭で興じる春波と狼に、晴明が声をかけた。
「喉が渇いたろう」
木の桶に水を汲んで階に置く。
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