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晴明に問われて近習が顔を見合わせる。
「それは……しかし……芸達者な獣とは思いまするが」
「では博雅しか知らないこと……は無理であろうから、博雅とお前達しか知らないことを聞いてみるが良い」
納得のいかない様子の男たちに、晴明が提案した。
「えー昨日の朝餉の香の物は?」
『瓜』と書かれた字に、ぺたり、と前足。春波がぱちぱちと小さな手を叩く。
晴明の目つきが冷たくなった。質問をした男がぽりぽりと頭を掻く。
「ではそれがしが」
博雅の身の回りの世話をしている近習のひとりが、膝で前に進み出た。
「一昨日届きました文の差出人は?」
文、と晴明が顔を上げる。さらさらと3つ名前が書かれた紙の上にずいと身を乗り出した。
他の者も興味深々で見つめてくる。
「これは誠に、殿とそれがししか知らぬこと」
獣が逡巡する。困ったような光を浮かべる瞳を晴明が見返した。無言で顎をしゃくって答えを促す。
ぺた。
おおぉ~っと声が上がった。
「何と貴子殿とな」
「真でござるか」
「間違いござらん」
問われた近習が大意張りで頷く。
「その後、わたくしが墨をすりまして、殿がお返事を」
「ほう、どのような」
晴明が身を乗り出す。
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