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「じいちゃん、はちみつどこやった?」
「冷蔵庫じゃないけ?」
「はちみつは常温でいいんだよ」
無性にあまいモノを食べたくなった。
去年母が亡くなって以来、父と祖父と僕、男三人の家庭になって以来、時間のない朝食は毎回こんな感じになっている。
未だに台所のどこに何があるかもわからず、食パンに何かトッピングするだけの質素な朝食になってしまった。
「じゃあ行ってきます」
「気を付けてな」
そう言って今日も質素な朝食を急いで済ませ学校に向かう。
それでも何でもない、いつもの日常と変わらなかった。
でも、どこか嫌な予感、胸騒ぎだけは感じていた。
この日は勝負の日だったからだ。
その正体は学校につき、下駄箱を開けた瞬間だった。
あってほしいものが無かった。
あるはずのものが無かった。
あるべきものが無かった。
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