葬式

2/2
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
「どうして死んだんだよ、翼君……!」 友人である南沢の、絞り出すような呻き声が聞こえる。 その声にぱっと目を開けると、別世界に踏み込んでしまったような違和感を感じた。 目の前にかざした両手は血液など通っていないように淡く透き通った色をしており、足元は地面からふわりと浮いている。 一体、俺はどうしたっていうんだ。 「うっ……」 その途端、全身から血の気が引き、込み上げてきた吐瀉感を必死で押し戻す。 ちらりと横目で辺りを伺うと、クラスメートや後輩がハンカチで目を覆っている。側には今にも崩れそうな母親の姿を、目を真っ赤に腫らした父親が支えていた。 俺と同じ制服を着た南沢が、唇を噛みしめながら悲痛な面持ちでどこか遠くを眺めている。その視線の先には祭壇があり、高校入学時のあどけない笑顔を浮かべた俺の写真が飾られていた。 あの時、俺は死んだのか。 気付きたくなかった真実をぽつりと吐き出すと、どこか心が軽くなったように感じた。 寸前で逃げられたと思っていたのに……。 あいつは、氷室はどうなったんだ。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!