194人が本棚に入れています
本棚に追加
「よう、苦しそうじゃん? 楽にしたげようか?」
見上げたそこに、にやついた五、六人の男。
その中には、小学校からの腐れ縁が切れない男、赤城庄次もいた。
学校内で公表される成績の順位表で、後ろから数えた方が早いところに名前があるくせに、眼鏡をかけている。
呼吸はまだ正常に戻らない。
「なに? こいつ変な病気とか持ってんの? 気色わりぃ」
男子生徒の笑い声の中で、赤城が溜息をつく。
「小学校んときから変わらないんだな。桜井さん、知ってんのかよ? このこと」
男達の輪から抜け出て、こちらの背中に手を当てた。
「過呼吸だ。大丈夫。手で口を覆え。そう。今度はゆっくり息を吸って。うん。ゆっくり吐いて。そう。上手いよ。ゆっくり吸って」
赤城の善意に必死で応える。
苦しい。
この処置は合っているのだろうか?
「桜井さんって、誰よ? 女?」
名前も知らない男子生徒の言葉に、赤城はまた溜息をついた。
「そんなもんかな……。親だけど」
睨みつけた蛍に、「だろ?」と首を傾げてくる。
「それとも、お前が女役してる?」
その言葉に反応したのは、蛍ではなく赤城の友人達だった。
「なに、なに? 桜井さんって、男? 渋谷、ホモだったのかよ? てか、相手が親って、性生活乱れ過ぎだろ?」
蛍は、赤城の声を頼りに、自分の呼吸を整えることに専念した。
突然、胸倉を掴まれ、酸素が取り込めず、頭の中が真っ白になった。
赤城は友人がする行為を止めようとせず、ゆっくりと立ち上がった。
「なあ、俺らも相手してくれよ。フェラくらいなら、させてやってもいいぜ」
蛍は軽蔑を含んだ笑みを男子生徒に向けた。顔を殴られ、コンクリに背中から倒れる。腹に足がめり込んできた。
真っ白な視界が真っ黒になっていく。
最初のコメントを投稿しよう!