父の男

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「よう、苦しそうじゃん? 楽にしたげようか?」  見上げたそこに、にやついた五、六人の男。  その中には、小学校からの腐れ縁が切れない男、赤城庄次もいた。  学校内で公表される成績の順位表で、後ろから数えた方が早いところに名前があるくせに、眼鏡をかけている。  呼吸はまだ正常に戻らない。 「なに? こいつ変な病気とか持ってんの? 気色わりぃ」  男子生徒の笑い声の中で、赤城が溜息をつく。 「小学校んときから変わらないんだな。桜井さん、知ってんのかよ? このこと」  男達の輪から抜け出て、こちらの背中に手を当てた。 「過呼吸だ。大丈夫。手で口を覆え。そう。今度はゆっくり息を吸って。うん。ゆっくり吐いて。そう。上手いよ。ゆっくり吸って」  赤城の善意に必死で応える。  苦しい。  この処置は合っているのだろうか? 「桜井さんって、誰よ? 女?」  名前も知らない男子生徒の言葉に、赤城はまた溜息をついた。 「そんなもんかな……。親だけど」  睨みつけた蛍に、「だろ?」と首を傾げてくる。 「それとも、お前が女役してる?」  その言葉に反応したのは、蛍ではなく赤城の友人達だった。 「なに、なに? 桜井さんって、男? 渋谷、ホモだったのかよ? てか、相手が親って、性生活乱れ過ぎだろ?」  蛍は、赤城の声を頼りに、自分の呼吸を整えることに専念した。  突然、胸倉を掴まれ、酸素が取り込めず、頭の中が真っ白になった。  赤城は友人がする行為を止めようとせず、ゆっくりと立ち上がった。 「なあ、俺らも相手してくれよ。フェラくらいなら、させてやってもいいぜ」  蛍は軽蔑を含んだ笑みを男子生徒に向けた。顔を殴られ、コンクリに背中から倒れる。腹に足がめり込んできた。  真っ白な視界が真っ黒になっていく。
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