父の男

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「それにしても、また随分格好よくなったなあ。どこのガキ大将とやったら、こんな風になるんだ?」  昭弘の手が頬に触れる。瞳が曇り、遠いものを見るような眼差しに変わっていく。  蛍は相手の手を払い、頭を掻いた。 「そうかそうか、余計なお世話か」  彼の手がこちらの髪を整え、ついで頬に触れてくる。 「そういえば、最近、T高校に、新しい大将が生まれたらしい。何人か、病院送りにしているって聞いた」 「俺には関係ない」 「……ああ」  昭弘は微笑し、ずらりと並ぶ商品に向き直った。 「おっ、この豚肉、安いと思ったら、脂身だらけだ」  昭弘がにやけながら、パックを差し出してくる。蛍は丁重にそれを戻し、他の豚肉を取った。 「蛍~、菓子売り場に行かないか? なんか、甘いものが食いたい気分なんだ。当直明けで体がきつくって。そう言えば、新作の抹茶チョコが出てるって、テレビで宣伝されてたなあ。旨そうだった」 「ハバネロチップスなら食費から出すけど、それ以外は自分で出せ」 「ええ! いいだろ、それくらい。俺、煙草吸わないし、酒も嗜む程度だろ?」 「はあ? あんたにはちゃんと小遣いやってんだろ? 弁当も作ってやってんだろ? 一万、減らすか? 遊び代だけで五万もいらねえよな?」  ちなみに、蛍に小遣いはない。 「あんたがマイホーム、欲しいだとかぬかすから、俺は節約してんだよ!」 「はっ? えっ? 覚えてたのか? あれは、ほら、なんだ、ジョークだよ。アメリカンジョーク? 家欲しいな、イエーみたいな?」 「笑えねえから、やめろ」  歳の差を感じる。こういう場面でどうしようもなく、ジェネレーションギャップにぶち当たる。これが平成生まれと昭和生まれの垣根だろうか。 「甘いものなら、俺が作ってやっから、我慢しろ」   
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