episode213  フェアリーとその媚薬 ①

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「……ええ。ですがご安心ください。今朝無事に捕獲されたようですし。何より観賞用の無害な蛇ですので」 「は?無害な蛇だって?よくもそんなっ……!」 無害だなんて あいつの本性を知らないから言えるんだ。 「和樹坊ちゃま……?」 「あいつはね……あの蛇はねぇっ……!」 蛇の分際で僕の身体に ――いいや思い出したくもない。 あの日から数日。 蛇の這ったとおり 身体中に蕁麻疹に出て ようやく良くなってきたとこなんだ。 「いかがなさいました?……和樹坊ちゃま!」 「失礼。食欲が失せた」 ヒステリー発作のように 身体を震わせ席を立つ僕を。 紅茶ポットを手にした中川は不安げに 「中川――今夜はウナギがいいな」 征司は今にも吹き出さんばかりの顔して見つめていた。
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