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episode213 フェアリーとその媚薬 ①
蛇の悪夢から数日後の朝。
「まさか蛇があんな重いケージを投げ倒して脱走するなんて思いもしなくて……」
「物騒な話ですね。ちゃんと捕まえたのですか?」
「ええ。今朝ようやく温室の木の上にいるところを見つけました」
「それはよかった。ご家族の皆様に何かあってからでは大変です。お子様も生まれるのですからね」
「はい……申し訳ありません。午後、預かった施設に返してこようと思います」
「そうですね。それがいいでしょう」
「すみません」
かわいそうに。
中川に叱られた無実の満は
小さな身体を余計に縮こまらせて食堂を去ってゆく。
「何の話だ?」
自分が一番
よく分かっているくせに――。
「蛇が逃げたって?」
開いた新聞の向こうから
征司は悪戯にチラリ視線を上げる。
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