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だが、対してヘラヘラした感じすらする木葉刑事は、近場のコンビニ脇の公園を見て。
「ちょっと、貴方が昔に行った大罪について話しませんか?」
と、歩き始めた。
‘大罪’と聞いて、ギュッと目を凝らす遠矢。
(俺の大罪だとぉ?)
唐突に大罪と言われても、数え切れないからどれかと思う遠矢。
そして、大型連休の初日と云うことでか、多くの子供達が遊ぶ公園にて。 公民館所有の公共プール施設のピンク色をした壁に凭れた木葉刑事。 また、その目の前に仁王立ちする遠矢。
先に遠矢が、録音の出来るペンを出し。
「刑事サンよ、お宅の話が言い掛かりだと困るんでネ。 全て、録音させて貰うぞ」
こう木葉刑事を牽制した。 言葉尻一つも逃さず、後で難癖を付ける為に録音する。 ライターである遠矢ならではの常套手段で、彼より甘い汁を貰う悪徳弁護士がバックに居ることすら臭わせる。
だが、言われた木葉刑事は、何故か珍しくニヤリとして。 録音されていることも構わずに話し始めた。
「今から、そぉ~ですね、ざっと・・・一年と七ヶ月ほど前。 まだ世間では、広縞の行っていた連続事件が起こっていた最中です」
「あぁ、それが?」
「と或る日。 東京都足立区では、二件の殺人と、二人の被害者が出ました」
「・・・」
殺人事件の話が始まると急に、急にだ。 遠矢が顔色を変えて、ガッと黙った。 木葉刑事の話に、それまでは喧嘩でもしそうな怒りを孕む顔が、驚きの一色へと豹変した。
その表情の変化を、木葉刑事は決して見逃さない。
「あら、事件について覚えが有る?」
尋ねる事で、遠矢の心の隙に踏み込む木葉刑事。
「な゛っ、何をっ。 心当たりなんか、在る訳が・ない」
しどろもどろと成る遠矢だが。 対する木葉刑事は話を止める事もせず。
「さ~き~さ~か~は~る~か~さん。 〔向坂 遥果〕《さきさか はるか》さんのことは、遠矢さんもご存知ですよねぇ~」
と、ゆっくりした物言いで名前を言う。
その瞬間だ。
「う゛っ!」
ビクッとした遠矢は息を飲み込んで、木葉刑事に目を向けて凝らした。
その、完全に心の虚を突かれた様な、遠矢の驚きの顔。 それを見る木葉刑事は、柔和な邪気一つない笑みにてニッコリとして。
「あらら、や~っぱり犯人は貴方か…」
木葉刑事の話に、遠矢がまた豹変。 噴き出す怒りを形相へ浮かべると、木葉刑事へと強くにじり寄って。
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