第一部・続

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「彼女の遺体は確か・・奥多摩で見つかった。 だが、可笑しいですよねぇ。 彼女の住まいは、足立区の中央本町。 普通、彼女が自分から用もなさそうな奥多摩に行く訳が無いし。 また、用も無いのにあの遅い時間帯で、あんな人気の無くなった寺の敷地には来ない。 然も、聞き込みをして回った俺の記憶が確かならば、貴方を見た証言まで書き留めて在る。 聞き込みで、貴方の名前が挙がってましたよ~。 刑事の間では、貴方は有名人ですからねぇ」 またズブっと、言葉のナイフを遠矢に刺し込む。 「う゛っ!」 “嘘を言うな゛っ!” 吼えそうになる遠矢。 だが、少し離れた周りには、子供がいっぱい遊んで居る。 此処で大声を上げれば、明らかに自分は不審者だ。  そして、その内心では。 (な゛んてこったぁっ!! あの広縞の事件を担当していた刑事かっ! あの日の夜の映像だとぉ? 事件で押収されてるなら、まだ処分もされて無ぇっ!!!!!! ヤベェ・・この刑事はヤベェぞっ!) 内心で焦る遠矢には、明らかに心当たりが在る様だ。 そんな遠矢の焦りを見抜くのか。 木葉刑事は、また柔らかくニタリとして。 「明日からゆっくりと、向坂さんの未解決事件を捜査させて貰いますよ。 防犯カメラの映像もそうだけど。 オービスの映像も、近年は新しくサーバーが強化されて、何年もの記録が残るんだよね。 レンタカーか、他人に借りた車か、犯行の足跡が残っていそうな処からじ~っくり調べさせて貰うよ」 と、此処まで言うと今度は、木葉刑事から遠矢に態度で踏み込み。 鋭い睨みを相手の眼に入れると。 「向坂 遥果さんの無念、アンタにはしっかり償って貰うからな…」 こう言っても、尚も刑事として犯人を特定して追い詰める時の、まるで獲物を見詰めた狩人のような鋭い視線を保ち。 「遠矢、アンタに問われる罪は、それだけじゃないぞ。 苛立ちから蹴っ飛ばして、傷害負わせた子供とか。 借金を返させる為に追い込んで、自殺させた人も居るンだろう?」 と、木葉刑事は続ける。 遠矢の背負う全ての罪を見透かして居るかの様に、低い小声で言い放つのだ。
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