第一部・続

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「遠矢さんっ、遂に凶行ッスか?!!」 里谷刑事からの情報で、遠矢が来ると判っていた木葉刑事がこう云うと。 桜の木の影より、木葉刑事へとにじり寄る黒い人影。 「チッ。 気付いて…」 いつの間にか黒いパーカーを羽織った遠矢は、フードに隠した顔を忌々しげに歪ませた。 木葉刑事に尾行が気付かれていたと焦ったからだ。 然し、まだ周りに人の気配は無く。 木葉刑事は一人と見て、一気にカタを着けようと迫る遠矢だが。 「遠矢 清彦っ! 殺人未遂の現行犯ねっ」 突然、真後ろから女性の声がする。 「何ィっ?」 里谷刑事の声と察し、警察が来て居ると知り慌てて振り返る遠矢だが。 木葉刑事の引いた先に在る橋から、遊歩道の右の建物の間の路地から、拳銃を携帯した刑事が次々と現れる。 黒いスーツの捜査員に包囲された遠矢は、木葉刑事を睨み付け。 「キッサマァァっ、俺をハメたのかぁっ!!」 と、漸くハメられたと理解して怒鳴り散らした。 だが、川向こうの歩道へと架かる橋の欄干に手を掛ける木葉刑事は、 「貴方みたいな‘チョー’の付くヤバい方を相手に、一人で暴走なんてしませんよ。 俺への殺人未遂に、過去の向坂さんへの殺人をオマケに付けて、其処へ過去の未発覚事件も乗っけます。 いい加減、そろそろ罪の清算はしないとね」 「このぉぉぉぉっ!!」 殺人未遂の現行犯として逮捕されることが明確となり、ヤケクソに成る遠矢だが。 そんな彼の背後に迫った里谷刑事が素早く動く。 遠矢の左膝裏側に蹴りを入れ、バランスを崩し掛けた彼の右太股の上部外側へ、特殊警棒に因る鋭い一撃を叩き込む。 「う゛わぁっ」 前のめりと膝を崩す遠矢へ、右脇から来る刑事が警棒でナイフを叩き落とすと。 「武器が離れたっ、全員っ、確保おっ!」 大声が上がり、刑事達が一斉に遠矢へと襲い掛かった。 里谷刑事に右足の関節を踏まれてしまった遠矢は、十人以上の刑事に取り押さえられてしまう。 歩行者の規制までして万全の包囲網は、こうして遠矢逮捕を現実のものにした。 また、遠矢の現行犯逮捕を聴いた警視庁の刑事部長を筆頭に、捜査一課長や篠田班長は大喜びをしたと云う。
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