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やっと目覚め、悪霊の件から解放された木葉刑事。 然し、‘刑事’と云う職業に在る事には、何らの変わりは無い。
そして、里谷刑事と話しながらの食事も終わる頃か。 自身のスマートホンがメールを着信した時だ。
“ブーン・ブーン・ブーン”
スマホからバイブ音が鳴る時、木葉刑事は幽霊を感じる気配を強く覚えて目を見張る。
(え? あれは、か・・和世さん?)
視界の先、テラス席に出る窓型の扉の手前に置かれた観葉植物。 その鉢から伸びる室内観賞用の桜の木陰に立つのは、古川刑事の奥さんだった和世の霊。
(手を合わせて、俺に頭を下げて居る?)
そんな和世の霊を見た木葉刑事は、胸騒ぎを感じてスマホを取り出す。 そして、メールを読むと…。
「里谷さん、もう出ましょうか」
テーブルの上の品を全て食べた里谷刑事は、眠気も来た処だった為か。
「あ・・そうね。 もうお昼も過ぎて、2時近いし…」
料金を割り勘にして払い、二人して車に乗り込んだ時。 助手席に座ると、またスマホを見た木葉刑事が。
「里谷さん。 実は、詩織ちゃんからメールが来てるンですがね」
こう話す木葉刑事が、人前ではそんなに悩まないのを見知った里谷刑事。
(記憶喪失の後遺症で沈ませない為には、メールも丁度イイわね)
と、内心で想いながらも。
「あら、美人刑事に送らせておいて。 後から美少女と浮気?」
半笑いに絡むのだが。 見た木葉刑事の顔は、既に悪霊と対峙していた頃のように、厳しい真顔へ変わっていた。
(あら?)
“どうしたのか”
こう思う里谷刑事に対し。 メールの画面を開いたままの木葉刑事は。
「いえ、里谷さん。 それが、あまり良くないメールですね」
引き締まった真面目な声で言うのだ。
「何?」
里谷刑事の眠気が払拭されて、木葉刑事は刑事の顔をすると。
「何の魂胆か、フルさんの不審死を含め御家族の死の内容を知りたい、とね。 今、フリーライターのあの‘遠矢’が、詩織ちゃんの居る学園に訪ねて来てるそうです」
その話を聴いた途端だ。 里谷刑事が勢い良くエンジンボタンを押して。
「詩織ちゃんのトコ、ソッコーで行くわ。 あの遠矢に絡まれて、イイ目に遭った遺族は居無いっ」
勢い良く走り出した里谷刑事の車は、狛江市の聖凛学園へと向かった。
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