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「遠矢さん、前々から言っていますが。 生徒にお金を渡す様な、そんな取材は止めて下さい。 妄想からの噂を、さも真実の様に書かれては、此方も困りますっ」
と、完全に抗議をした。
然し、横柄な態度にて園長の話には聞く耳を持たない、とそんな様子の遠矢と云う記者。 180センチを超える立派な体格から、圧しは効きそうな不貞不貞しい面構え。 身体も鍛えているらしく、スーツ下のタンクトップから見える喉元や胸元は、引き締まっていた。
「あのねぇっ!」
明らかに態と大声を出した遠矢はニタニタと顔をさせながらも、目付きだけで園長を睨み付けると。
「私は事実を取材して、それを書くだけですよぉ。 お宅の学園で、去年に次々と死んだ不良の三人。 ヤクの密売をやってたり、恐喝やら傷害もやってましたよねぇっ!」
これは園長も全く知らない所からの話で、彼女も内心の本音は非常に困りながらも。
「いくら私達でも、学生の私生活を監視までは出来ません。 それが事実ならば、警察が然るべき行動をしますっ」
と、毅然として返す。
処が。 この遠矢と云う男の眼は、更に獲物を追い詰める様なものに変わりながら。
「園長さん、それは~チョイト無責任でしょうよ。 最後に殺された‘横川’って学生は、あの三人から酷いイジメを受けていたそうじゃ~ないですか。 然も、学園の内外でっ」
「そっ…」
これには、園長も強く言い返す声が出ない。 惨殺事件の後の内部聞き取りにて、先生がその事を認識していたと知るからだ。
然し、この園長が見せた態度は、遠矢と云う人物には正に‘待ってました’と云うもの。
「まぁ、別に過ぎ去った過去の事は、書かなくてもイイんですよ。 このネタは、既に一部のゴシップ雑誌に載っている訳ですから。 でもね、古川刑事の不審死を含め、あの美少女はイイ記事に成る。 その取材だけ、アンタが許可して貰えれば、・・・ねぇ」
悪魔の囁きの様に、語りの途中から下手に出る様な言い出し方をした遠矢。
だが園長は、この非道な男の言いなりへ成り下がるのは御免と。
「そんな許可はっ、絶対にしませんっ! そんな交換条件を突き付けるなんて、貴方は卑怯です。 もうお帰り下さい。 貴方の事は、此方も弁護士さんを交えて考えます」
キッパリ、こう言い切った園長。
すると遠矢は、徐にスーツの内側に手を入れて、一枚の写真を出した。
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