第一部・続

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そんな緊迫した其処へドアが開くなりに。 「はい、其処まで」 と、乾いた女性の声が。 遠矢と園長が、知らない第三者の声を受けてドアの方を見れば。 里谷刑事が応接室内へと入り、警察のライセンスを突き出して見せながら。 「私は、警視庁捜査一課の里谷と云います。 脅迫と威力業務妨害で現逮ね、遠矢さん」 突然な刑事の出現に、園長も、遠矢も、鳩が豆鉄砲を食らったかの様に固まった…。 然し、直ぐに遠矢が顔を苛立たせ始め。 「そんな証拠がっ、何処に!」 強気に言い返すも。 里谷刑事の後ろから部屋へと入って来た木葉刑事が。 「アナタ先程に、古川詩織って学生に脅しを掛けましたよね? その子の友人が、その様子をムービー画像で録画してましたよ。 それから、今の園長さんとの遣り取りは、此方が全て録音させて頂きました」 こう言いながらスマホを揺らす。 其処で園長は、以前に聞き込みで来た木葉刑事を見覚えていた。 「貴方、確か捜査一課の…」 その言葉を聞きながら頷いて近付く木葉刑事だが、遠矢の間近まで来ると。 「ご無沙汰です。 以前は捜査協力をして頂き、ありがとうございます」 こう園長に一礼を現してから、次に遠矢へ向く木葉刑事。 が、この時に木葉刑事の眼は、或る異様な光景を映す。 それは、霊能力を持つ木葉刑事だから視えているのか。 それとも、あの悪霊と関わり、異質な力に目覚めた彼の眼だけに視えているのか、それは定かではないが。 この場に居る“生ける人”ではない、然し人の念を持った者が視えていた。 (この男、一体これまでに何人の人を…) 自分以外の誰にも見えていない光景を前にし、遠矢の隠された罪を視た木葉刑事。 その瞬間、このままの逮捕では、詩織を生涯に渡って守るなど困難と察した。 だから…。 「遠矢サン。 古川詩織さんにこれ以上の付きまといは止めてくれませんかね。 そっちが折れてくれるならば、こっちも‘微罪’での逮捕は見送りますが・・。 どうします?」 と、甘ったれたことを言うではないか。 この物言いには、入り口にて様子を見守る詩織も、園長も、里谷刑事ですら驚いた。 一方、遠矢自身は、警察に園長との話を聴かれた上にやり取りを録音され、また詩織の友人に脅した所を録画までされた手前。 逮捕されたら裁判では、執行猶予まで運ぶのもどうか・・と思う。 だからこの木葉刑事の話は、渡りに船の好条件と思い。
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