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「この外見の良さは変えられないけど…。 詩織ちゃんは、もう先を一点に決めて進んでる。 今は、もう少し時間を掛けて、生活を徐々に落ち着けて行くしかない」
と、こう言い。 そして、また園長を見て。
「ですからもう少し、彼女のサポートをお願いします。 我々は、アイツの微罪じゃない罪を調べますから」
何となく意味深な事を言って、廊下に向かって行く木葉刑事。
さて、木葉刑事がこう言って動くのを見て、里谷刑事は何かを敏感に感じる。 木葉刑事の態度は、密かに悪霊を追う時の彼に見えていた。
また、
(‘微罪’じゃない‘罪’って、・・まさかっ)
詩織や園長への脅しを、彼が微罪と言い切った。 その言葉の裏側に見えた意味に気付くと、里谷刑事もまた気持ちを入れ換え。
「園長さん。 あの男については、此方に任せて下さい」
と、言い。
また、不安げに木葉刑事を見送る詩織には、
「見た目には頼りないお兄ちゃんだけど。 頭のキレは、他の誰よりも在るから安心なさい」
こう安心させる為に言いおく。
そして、先に廊下を行く木葉刑事に、後から追い付く里谷刑事が。
「ねぇ、チョット。 もしかして‘微罪’じゃなくて、‘大罪’が視える訳?」
肩を並べた木葉刑事に小声で問うた。
問われた木葉刑事は、立ち止まって里谷刑事を見返した。 ちょっと驚く様な顔で、見透かされたと顔に出ている。
それが、返って複雑な気持ちに成る里谷刑事。 然し今は、目の前の悪党に向かうべきと。
「貴方が幽霊を視える事を私は知ってるって、さっき言った筈よ。 それより、あの男をどうするの? 放って置いたら、絶対にもっと汚い遣り方で悪さするわよ」
確かにそうだった・・と思った木葉刑事は、ちょっと落ち込む様に溜め息を吐いた後。
「ま、隠さない相手が居る方が、楽は楽か…」
こう小声で呟いた後。
里谷刑事と肩を並べ、人気の少ない廊下を歩きながら。
「此処だから本当を言いますと、あの男を見た時に内心で腰が抜け掛けましたよ。 忘れ掛けていた或る記憶の一部が、爆発する様に目覚めました」
「えっ? それって・・まさかあの事件の?」
まさか、あの悪霊が引き起こした事件の記憶か、と驚く里谷刑事。
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