第一部・続

8/29
前へ
/29ページ
次へ
「この外見の良さは変えられないけど…。 詩織ちゃんは、もう先を一点に決めて進んでる。 今は、もう少し時間を掛けて、生活を徐々に落ち着けて行くしかない」 と、こう言い。 そして、また園長を見て。 「ですからもう少し、彼女のサポートをお願いします。 我々は、アイツの微罪じゃない罪を調べますから」 何となく意味深な事を言って、廊下に向かって行く木葉刑事。 さて、木葉刑事がこう言って動くのを見て、里谷刑事は何かを敏感に感じる。 木葉刑事の態度は、密かに悪霊を追う時の彼に見えていた。 また、 (‘微罪’じゃない‘罪’って、・・まさかっ) 詩織や園長への脅しを、彼が微罪と言い切った。 その言葉の裏側に見えた意味に気付くと、里谷刑事もまた気持ちを入れ換え。 「園長さん。 あの男については、此方に任せて下さい」 と、言い。 また、不安げに木葉刑事を見送る詩織には、 「見た目には頼りないお兄ちゃんだけど。 頭のキレは、他の誰よりも在るから安心なさい」 こう安心させる為に言いおく。 そして、先に廊下を行く木葉刑事に、後から追い付く里谷刑事が。 「ねぇ、チョット。 もしかして‘微罪’じゃなくて、‘大罪’が視える訳?」 肩を並べた木葉刑事に小声で問うた。 問われた木葉刑事は、立ち止まって里谷刑事を見返した。 ちょっと驚く様な顔で、見透かされたと顔に出ている。 それが、返って複雑な気持ちに成る里谷刑事。 然し今は、目の前の悪党に向かうべきと。 「貴方が幽霊を視える事を私は知ってるって、さっき言った筈よ。 それより、あの男をどうするの? 放って置いたら、絶対にもっと汚い遣り方で悪さするわよ」 確かにそうだった・・と思った木葉刑事は、ちょっと落ち込む様に溜め息を吐いた後。 「ま、隠さない相手が居る方が、楽は楽か…」 こう小声で呟いた後。 里谷刑事と肩を並べ、人気の少ない廊下を歩きながら。 「此処だから本当を言いますと、あの男を見た時に内心で腰が抜け掛けましたよ。 忘れ掛けていた或る記憶の一部が、爆発する様に目覚めました」 「えっ? それって・・まさかあの事件の?」 まさか、あの悪霊が引き起こした事件の記憶か、と驚く里谷刑事。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加