第一部・続

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然も、高みの窓より校庭を眺め見る木葉刑事は、偉そうに出てゆく遠矢の姿を目敏く見つけておきながら。 「あの遠矢って男は、甘く見ても‘傷害致死’事件を起こしてますね。 然も、何とまぁ広縞の事件に関わって、被害者遺族を直接的に暴力で死なせて居ます」 「はぁ、広縞・・って、あの広縞? 直接的にって・・ま、マジ?」 「えぇ。 また驚くことにですね、その亡くなった被害者の女性とは、実は俺の知っていた人物ですよ」 この話で、里谷刑事の眉間が刑事らしいシワを作り、木葉刑事の睨む遠矢の背を見る。 代わって。 部活をする生徒に脅しめいた睨み付けをしながらも、木葉刑事たちより逃げる様にして学園を出たフリーライターの遠矢は、校門前で学園に振り向くと。 怒りと悪意をギラギラと眼に出し、高い位置に在る応接室辺りへ睨み付ける。 (チキショウっ、あのクソガキめっ! 親父の伝からだろうが、一課の刑事を呼びやがってぇ…。 然し、もう親父やジジィも死んだんだ。 あんなイイ面を放って置くのも勿体無ぇ。 どうにか脅して誘き寄せてから、服をヒン剥いて食ってやるっ。 その後は、ヤクの味でも覚えさてから、AVの女優としてでも売り出してやるぞ!!) この異様と云うべきか、異常な悪意と云うか偏執的怒りは、逆恨みか。 恐ろしいこと考える遠矢は、まだ詩織を狙うらしいが・・。 この意欲は何処から来るのだろう。 おそらくこの実態の理由は、木葉刑事も知らないだろう。 実は…。 遠矢と詩織の父親の古川刑事とは、ちょっとした過去が有った。 若い頃から違法もクソ食らえの取材方法を取る遠矢を、一度は古川刑事が捕まえた事が在る。 その時は高い金を弁護士に払い、執行猶予で済んだが。 自分の遣った事など棚にすら上げ無視する遠矢だが。 自分の人生に土を付けたと言える男の娘を、その庇護も消え去ったからとボロ雑巾の様にしてやろうと思っていた。 さて。 魂胆を潰され苛立ちながら駅の方に歩き始めた遠矢は、どうやって詩織と園長を潰してボロボロにするか、本気で考え始めた。 この男の頭の中での女性など、金儲けの道具としか思わない。 若い頃から人の弱みに漬け込む性格だし。 彼のする交際など、正に隅から隅まで真っ黒けで在る。
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