第一話 異端者

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神々はともすると過剰な状態に陥り、 ポジティブが転じてネガティブとなりやすい危険があった。 ヘラはそれを危惧し、夫である最高神ゼウスに 「たった一人で良いから吸い取る力のある者を!」 と命じたのだ。 こう書くと さもヘラが先見の明があるように思えるが… 実際はそうではない。 ヘラは天界の食べ物があまりに美味しくて 「過剰な栄養摂取」から「肥満」となってしまったのだ。 人間の諸君よ! 神々や天使を描いた古来の有名な絵画を思い出して欲しい。 …神々や天使達は 非常にふくよかに描かれていないだろうか…? ふくよかなる「美」は良い。 好みはそれぞれあるだろうが、 行き過ぎは…いや、筆者はこれ以上言える立場にはない。 そうそう、申し遅れたが、 筆者の立場は天界の「ミンストレル(吟遊詩人)」 だと思って頂ければ幸いである。 …話が横道に反れたが、 そんな経緯から、その者には「吸い取る力」が与えられた。 同時に そのエネルギーが「不足」してもネガティブな状態に陥る為… 「与える力」も与えられていた。 「喜び」のエネルギーが不足して「不平不満・欲求不満」となったり、 「癒し」のエネルギーが不足して「キレやすく攻撃的」となったり… まぁ、神々にエネルギーが「不足」となる事は無いだろうが。 よってその者は「吸い取る」と「与える」の対極にある力 が与えられた。 それ故彼は 天界では唯一「異質」の存在だった。 特に天使達は彼の「吸い取る力」に恐怖を感じ 「与える力」に嫉妬の念を覚えた。 その為彼はいつも孤独だった。 その者は「異端」であるが故に… 本来は仲間である筈の天使からは爪はじきにされ、 「異端者」として常に奇異な目で見られた。 されど彼は別段苦にはならなかった。 むしろ独りの方が気楽だった。 時折、ほんの少しだけ寂しさを感じる事はあったけれど…。 元々群れるのは苦手らしい。 彼は、必要に応じて神々の命じるままにその力を使う以外は、 平和である筈の天界に何故か設けられている 「稽古の森」で体を鍛えたり、 「図書館」で勉強をしたり。 そんな風に自由に過ごしていた。 「稽古の森」は唯一神が入れない場所であり 魔術、剣術、馬術、錬金術、体術、武道等 あらゆるものが揃い、一人でも鍛錬が出来るようになっていた。 しかし天使達はほとんどそこを利用しない。
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