第一話 異端者

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天使達の間では、 汗臭い努力は馬鹿馬鹿しいと感じる風潮にあるようだ。 それ故に 彼にとっては自由に鍛錬が出来る快適な場所だった。 だが唯一、そこを常連のように使用している天使がいた。 彼の名は「ミカエル(神に似た者)」 彼もまた、いつも独りで稽古をしていた。 初めてミカエルに会った時、まるで「太陽の光」だと感じた。 陽の光のような金髪が波打ち肩まで伸ばされ、 輝く白い肌と翼 サファイアを思わせるロイヤルブルーの瞳は 陽の光色の長い睫毛に囲まれている。 浮彫宝石のような顔立ちと表現できるであろう。 純白のローブと左腰の白い剣がよく似合っていた。 これだけの美貌の持ち主なのにも関わらず 神々の性の玩具にされない。 これは彼があまりにも純粋かつ真っすぐ過ぎて、 神々も手が出せないのだろう。 その者はそう確信した。 そう…神々の寵愛。美しい表現であるが、 この天界では「性のご奉仕」の隠語でもあった。 そうなると冒頭で登場した「ルシファー」が 日々どんな風に神々と過ごしているか。 人間の皆様にも想像に難くないのではないだろうか? この彼の類稀なる美貌はミカエルと対極にあった。 漆黒の艶髪は見事なストレートを誇り踵迄伸ばされ、 蝋のように青白く透き通るような肌 漆黒に艶めく切れ長の瞳は、 頬に影を落とす程長い漆黒の睫毛に囲まれている。 面長の顔立ちに優雅な漆黒の眉。 彫の深い顔立ち、心持先端が尖った耳。 その背には大きな翼があり 白とはこういう色かと思わせる程のピュアな白色であった。 その長身スリムな体を 宇宙を思わせるインディゴブルーのローブで覆っている。 ミカエルの美貌が「太陽の光」であるなら、 ルシファーはまさに「氷の美貌」と言えるであろう。 その異端なる者は、秘かにルシファーの事を不憫に感じていた。 それと同時に、彼は敢えてミカエルには近寄らなかった。 暑苦しくて関わると面倒な事になりそうだったからだ。 だからその者は なるべく時間帯をズラして「稽古の森」を使用した。 空気を読む力に長けているのだろう。 ミカエルもそんな彼の気持ちを察したように、 たまに会ってもお互いに会釈をするのみだった。 ただその者は、 ミカエルが自らの奇異な姿を見ても、 避けたり忌み嫌わない姿には一目置いていた。 お待たせして申し訳ない。 それではここで「その異端なる者」の容姿を説明しよう。
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