第一話 異端者

4/4
前へ
/20ページ
次へ
…殆ど黒に近い紫色の髪はあごのラインでカットされ、 シャギーを入れて全体的に軽くさせている。 そして品よく跳ねさせていた。 整った黒い眉、鼻筋の通った上品な鼻。 漆黒の長い睫毛に縁どられたその瞳も、 ほとんど黒に近い紫色で謎めいた光を放っている。 雪のように白い肌がその端正な顔立ちを際立たせていた。 人間に分かりやすく表現するなら ビジュアル系バンドと言うよりモデル系な超美形、 と表現できようか。 彼が身に纏う銀色のローブも、 短くしたり細めに縫ったりして 動きやすいようにアレンジしていた。 これは細身の筋肉質の体型、高めの身長に合わせ、 この者自らがアレンジを施したのだ。 神が絶対であるこの天界で、 神から与えられたローブに自らがアレンジする事など 通常では考えられない。 この辺りも、彼自身が異端である事が見てとれる。 更にゼウスは、この者が「異端」である事の証として、 20cm程度の細くて鋭利なダークグレーの角を授けた。 それはまるで牡山羊の角を思わせる。 その角が、 彼を「異端者」として周囲に知らしめる要因の一つだった。 角が生えている天使など皆無である。 明らかに奇異ではないか。もう一つの要因は、 彼の背に生えた大きな翼にある。 それは蝙蝠のような形で、 白鳥のような形の翼を持つ天使には奇異な形だった。 しかも色が紫に近い黒なのだ!! 翼の色は、 白かパステル調の明るい色で占める天使達の中で 明らかに異端・奇異である。 天使達に忌み嫌われる要因に、 これらの見た目も多分に加担されていた。 その異端なる者は「イブリース」と名付けられた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加