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「やぁやぁ。よく来てくれた。私は歓迎するよ!」
分厚いガラス越しに少女は両手を広げて私を歓迎してくれた。身長150センチ程度の小さな体で喜びを表現しようとしてくれている。
表情も弾ける笑顔という言葉ぴったり当てはまるほどくしゃくしゃに崩しながら笑顔を向けてくれている。
「急な取材を受けて頂いてありがとうございます」
深々と頭を下げる。
「はっはっは。気にしないでくれたまえ。こう見えて結構暇なのだよ。私は。忙しいのは私を研究している学者諸君だからね。ほらほら、立話しもなんだろう。座ってくれたまえ」
背中まである髪が綺麗に編み込まれていて、整った顔にも映えている。私は勧められるがままに目の前にあるパイプ椅子に座った。分厚い透明のガラスの中心の声が通るように小さな穴が無数に開いている。まるでというか留置所の面会室そのものだ。
私が座るのを認めると少女も楽しそうに自分がいる側にあるパイプ椅子に座る。すぐ隣に体格の大きなスーツ姿の男二人が並び立つ。
「ああ。この人たちは気にしないでくれたまえ。私の愛すべき学者諸君は心配性でね。私に何かあっては一大事といつもボディガードをつけてくれるのだよ。心配性というよりも過保護だねこれは。まぁ、彼ら彼女らにとって私というモルモットが傷つくのは一大事なのかもしれないからね。あっはっは」
けらけらと楽しそうに笑いマシンガンのように言葉を続ける。私はその勢いに圧倒されて息をのむことしかできない。
「ああ。すまないね。私ばっかり話してしまって。この施設の中には学者諸君とこのしゃべらないボディガード君と身の回りの世話をしてくれる人が数人いるだけなのでね。皆無口だから、いつも退屈しているのさ。私は。もっと私と会話してくれてもいいとおもうんだけどね」
隣に立っている色黒のサングラスのスーツのわき腹を小さな肘がつつく。
「仕事中の私語は禁止されています」
サングラスがその見た目とは裏腹に高い声で答える。
「はっは。お堅いねぇ。君は。そんな真面目なところも好きだけどさ」
「ありがとうございます」
深々と頭を下げるサングラス。
「本当に真面目だねぇ」と少女はまたケラケラと笑う。
「ああ。すまない。また脱線してしまったね。私の悪い癖だ。それで、君の取材というのはもちろん私の病気のことなのだろう?」
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