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「意外ですね」
「そうかい?」
「ええ。まだ会って数分しか経っていませんが、人懐っこくて話しやすい人に感じています。だから友達も多そうに見受けられるんです」
実際、笑顔も魅力的で話しているだけで惹き付けられそうになるほどのカリスマ性を感じていた。
「あはは。君は嬉しい事を言ってくれるね。溝内茜くん」
「……私、名乗りましたっけ?」
あまりにもあっさりと言い放たれて理解が追いつかない。
「いやいや、驚かせるつもりはなかったのだよ。私に興味を持って取材に来てくれると言うのだ。私も最低限相手の事を知っておこうと思って調べただけだよ。気に障ったのなら謝る」
「いや、別にそんなことはないのですが」
「そうか。そう言ってくれると私も助かるよ。それにまた敬語になっているよ溝内くん」
「仕事ですし、それに神倉さんは年上ですから」
「そうかい。残念至極だよ。君ならいい友達になってくれるかとも思ったんだけどね」
「そんな。私よりも友達にふさわしい人は一杯いるでしょう」
「そうでもないのだよ。友達というのは難しいものでね。私としては友達になりたいと思っているのだけれど、なかなか向こうが私を友達と思ってくれないのだよ」
やれやれと言った風情で肩を竦めて首を振って見せる。
「友情とは、誰かに小さな親切をしてやり、お返しに大きな親切を期待する契約である。だよ」
「モンテスキューですか」
「そうだね。友達って言うのは対等でありながら見下しあっているぐらいがちょうどいい関係だと私は思っているのだよ」
「……友達は対等のほうがいいと思いますが」
「人間っていうのは下を見て安心する生き物だからね。対等な相手でも見下しているぐらいがちょうどいいのさ。とはいえ、片一方が見下しているだけでは対等とは言えない。つまり見下しあっているぐらいでちょうどいいのだよ。溝内くん」
「そんなものですか」
そう相槌を打って気が付く。私と友達になれるかと思っていると言うことは、彼女は私を見下しているのだろう。それはいい。見下し合えると思われていると言うことは……。
私がいつの間に俯いていた顔を上げると、満面の笑みで私を見つめていた。口元を歪め、皮肉気に私を見つめていた。
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