長編に挑戦する人なら、きっと誰もが通る道。

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長編に挑戦する人なら、きっと誰もが通る道。

 夜の自室。パソコンの前で僕は誰にともなく一人呟いた。 「足りない」  僕の頭の中は、絶望一色である。  何度カウントしても、ほんの少しだけ足りない。具体的に申せば、いくらカウントし直しても、この小説は9万9900字しかない。 「後100文字……だと……」  何度も確認した、応募要項。 『文字数:10万字以上であること。』  短編ばかり書いてきた僕の、初めての長編小説。何度も手直しして、無理くり加筆して、ようやく9万9900字。後100字なんて、足せそうにもない。 「うわ~! せめて後10字とかだったらまだ何とかなるのに!」  僕はもう、発狂寸前であった。  このギリギリ足りそうで絶対に足りない文量。しかしこれ以上のエピソードを追加してしまっては絶対に全体が壊れてしまう。余分なパーツは入れられない。何かをひらがなに変えるのももう不自然になってしまう。今が最善、僕が思う完璧な状態だ。  大体、長編なんて書き慣れないもんだから、十分な量になるだろうと思って書き始めたらこれである。いや、正確に言えば、9万7500字程であったところを何とかここまで書き足したのである。 「あ~、どうしよう……う~わ、どうしよう……」     
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