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『はい、上見てー』
聞こえてきた声に、一緒になって見上げる。
見上げた都会の空は暗い。
周囲は住宅地で、周りからは家の明かりが漏れている為に、星の瞬きが見えにくい。
「星、あんまり見えないね」
『周りが明るいからねえ』
そんな呑気な会話を交わす。
『これで、いっちゃんと繋がった』
ぽつりと嬉しそうな声が妙にくすぐったい。
「繋がるも何も、今、こうして一緒にいるでしょうよ?」
事実、距離は若干あるけれども。思わず吹き出して笑いながら言うと、
『それじゃあ、また明日』
慌てて夜空から視線を戻すと、再び優雅に手を振りつつ、帰ろうと身を翻すところだった。
「え、王子、帰んの?」
『目的は達成出来たし、帰るよ』
月見の言葉に、思わず手から携帯を落としそうになり、しっかりと握り直す。
「こ、これ、これだけの為に来たの?」
『うん、そうだよ』
さらりと何ら気にすることも無く。
ただ、コレだけの為に彼は来たのだ。
寒い夜の道を……。
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