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「ウチ泊まるでしょ?」
風邪でも引いたら大変だ。
初舞台での練習は、彼は体調を崩していたりしていた。
病弱な生徒という役柄だから……と、いうワケではなく、実際に彼自体の身体も少し弱いというのがあるからで。
しかし、こちらを振り向いた月見は、ゆっくりと首を横に振った。
『ありがとう。でも、こんな時間に押しかけるのは悪いから。電車もまだあるし』
身を翻してそのまま夜道を行く。
「俺ン家は別に大丈夫だけど……!」
『おやすみ』
満足そうな、静かに落ち着いた声。
「あ、おやすみー……」
和泉はそのまま月見の背中を見送った。
引き止めることも出来ず、彼の目は遠くを見るようにぼんやりとしたものになる。
やっぱり王子って、不思議だ……。
もう一度夜空を見上げると、オレンジや青と光を放つ星達が静かに瞬いていた。
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