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和泉は家に帰ると、夕飯を食べ、風呂に入り、愛犬ポメラニアンのココアを愛でて一段落着いた。
二階にある自分の部屋へ引き上げれば、部屋の時計は十時になろうというところか。
ふと、頭の中に月見の声が蘇る。
あのとき、結局は見上げるかどうかなんて言わなかった。
すると、ベッドの上に放り出していた携帯が着信を知らせる。
画面を見れば、月見からで。
「王子?」
『夜空、見上げてる?』
言葉が一瞬詰まった。
「あー、うん。今、丁度。見てる見てる」
そう言いつつも、自分は温かな部屋の中。
カーテンは閉まっている。
電話の向こうで相手が小さく笑いを漏らした。
『本当に?』
「ほーんとだって! うわ、寒っ! 外、寒っ」
自分でもわざとらしいとは思うけれども、誤魔化すには上出来のライン。
『嘘だぁ』
「ちょ、マジだから!」
『えー? 見えないよー?』
「……え?」
月見の不思議な発言に、和泉はまたも目を丸くすることになった。
『いっちゃん、見てないでしょう?』
確信を含んだ声。
まさか……。
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