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和泉はカーテンを開け放ち、窓を開けて下へと視線を走らせる。
寒い夜風が身体を撫でるが、そんなことには構ってられない。
『やあ』
携帯からの声と、下にいる人物の、こちらへと手を振る動作がピッタリ合う。
「王子っ!?」
慌てて机の上にある眼鏡を手に取ると、そのまま慌てて眼鏡を掛ける。
くっきりした視界の中、街灯の明かりに照らし出されているのは、間違い無く月見蓮、本人だ。
「え、ちょ、アンタ、何やってんの!?」
近所迷惑を考慮して、そのまま携帯に話し掛ける。
月見もそれは心得ているようで、携帯は持ったままヒラヒラ手を振っていた。
『いっちゃんが、ちゃんと夜空を見上げてくれたかどうか、気になって』
「気になって、って……帰ったんじゃなかったの? てか、俺の家……」
まだ泊まりに来たこともない彼が、どうして実家まで辿り着けたのか。
『んー、ハラトモに聞いた』
「アイツか……」
頭の中に、瞬時にしてあの明るい男の顔が浮かび上がる。
相変わらず屈託の無い笑顔だ。
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