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水中での死闘:2
* * * 視点:香織 * * *
「人類側のプレイヤー?」
ぱっと見た感じは20代前半? の女性の言葉を反芻する香織。
「あら。 お誘いが無かったのね?」
「誘い?」
「運営側からの、お誘いよ。」
どうやら、この女性の話を聞くと。
運営側からの勧誘メールが在り。
そこで、勧誘を了承すると、他サーバーの敵対勢力と為って、他のサーバーのクエスト進行を妨害できる仕様らしい。
「・・・。 それじゃあ、貴方は敵って認識で良いのよね。」
香織が女性に向かって言う。
「ええ。 それと、私の名前は ルシエラ よ。
カシオペアのルシエラ。
宜しくね。香織ちゃん。」
「まぁ、よろしくね。」
と言い終わるか、どうかのタイミングで。
香織が、ルシエラの駆る機体に向かって先制攻撃を仕掛ける。
手に持つ武器。槍での突進攻撃。
だが、ルシエラの方は、まるで予測していたかの様に、香織が動き出すタイミングと同時に機体を動かして。
人魚に体当たり攻撃を仕掛けていた。
お互いの機体の攻撃が交差して海の中の海流を乱す。
「香織ちゃん。見た目に寄らずに過激ねぇ。」
「貴方もね。」
お互いに、思考が似ているのか。 不思議と嫌な感じはしない。
交差して、お互いに適当な所で向かい合う。
似た者同士の闘いが始まる。
* * * * * * *
ガクンと機体が揺れて、機体の束縛が解かれたのが分かる。
頼子の機体が、健太が囚われていた網を断ち切ったのだ。
「健ちゃん! 桂子さんをっ!」
その言葉だけで、健太は理解した。
すぐさま、桂子が囚われている網を手にした槍の様な武器で断ち切る。
「ありがとうね。 健太くん。」
頼子は続けてタクヤの網を断ち切る。
「サンキュウ! 頼子。」
「おっしゃあっ!! 反撃開始だぜっ!」
健太の声を皮切りに。
4人が別々の方向に散開する。
今度は、鮫の真正面に構えないように、絶えず側面から攻めるように。
数の上では、自分たちが有利なのを生かし。
誰かの正面に鮫が来たら、無理せず距離を取っている間に他の誰かが攻撃すると言った風に。
数分の攻防が過ぎた時には、鮫を全機撃破していた。
* * * * * *
「くっ! 調子に乗るなっ!」
ルシエラが吠えた。
水中の中を、縦横無尽に泳ぎ回る香織の駆る人魚の機体。
最初こそは良い勝負をしていたと思ったルシエラ。
だが、途中から。
香織の機体が目に見えて動くが良くなっていくのを感じる。
そして、今現在。
3分を経過する頃には、ルシエラの動きは、完全に香織に追いつけなくなっていた。
攻撃を当てたと思ったら、上に下にルシエラの攻撃を余裕で躱しながらヒット&アウェイを繰り返し。
鮫のHPを削っていき、既に鮫の機体のHPは危険域に突入していた。
当然ルシエラも、途中から慌てて精神連動兵器の小判鮫を放って応戦するも。
小判鮫の攻撃は、香織の機体に当たりもしない。
「空。」
『大丈夫です。 まだまだ余裕です。 このくらいの攻撃なら。
まだ、手動での悠夜の攻撃を予測する方が難解です。』
香織が手加減無しに、ルシエラの機体を追い詰める。
* * * * * * *
「ちょろちょろとっ!」
先ほどから、魔皇帝を攻撃しているのだが、攻撃が一向に当たらない。
それどころか、こちらの隙に対して攻撃もしてこない。
まるで遊ばれているような感覚にいら立ちが募っていく。
「おいっ! ポンコツ! もっとちゃんとサポートしやがれっ!」
『やっています!』
《プログラム・パターンチップの情報量が違い過ぎるのよ。 MUGENー000の機体の動きが読み切れない》
「ちっ! 役立たずが。」
役立たずはソッチだと言いたいが。
言った所で聞く耳持たずなのは理解している。
いま出来る事は、この戦闘中に、攻撃パターンを何とかして少しでも向上させる事に専念。
このプレイヤーの技術不足を補う事だけ。
* * * * * * *
「レイ。 相変わらず通信拒否か?」
『ダメね。 まったく応じる気が無いみたいだよ。』
「仕方がない。 そろそろ反撃しますか。」
『向こうの攻撃パターンは、ほぼ解析済みだから、遠慮なく反撃できるよ。』
「優秀だねぇ。 うちのレイは。」
当然と。言いたい所だが。
向こう側のプレイヤーが、機体の性能を引き出せなさすぎなのだ。
向こうの機体にも、自分と同じMUGENシリーズの、MUGENー001が居るのだから。
プレイヤーの技量を考慮しても。 ここまで、一方的には為る筈が無いのだけど。
悠夜は機体を上昇移動させると、謎の赤い機体との距離が少しづつ詰まって行くように速度を調節する。
そして、赤い機体が、近接攻撃に入った瞬間に、最大出力での潜航をする。
赤い機体のプレイヤーのからすれば、まるで目の前で魔皇帝が消えたかに見えたことだろう。
で魔皇帝が、一気に距離を取って、重力制御砲を発射させる。
赤い機体は、重力制御砲に捕まり。
その機体を、圧壊させて爆発エフェクトと共に消えた。
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