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水中での死闘:1
ガクン!と、機体が揺れて。
桂子、タクヤ、健太の機体が制御不能になる。
「なんだっ!」
操縦桿を動かすも、思い通りに動かない。
「網よっ!」
「網だっ!」
桂子と、タクヤが。ほぼ同時に声を上げる。
モニター越しでは判り辛いが、鋼糸で機体を包んでいた。
しかも、少しづつではあるが、機体のHPが減っていく。
水中での抵抗値で、機体の至る所に無理が掛かりHPが削られているのだ。
「くっそ!」
健太が無理やり機体を動かそうとするが、網に絡め捕られた上に水流の抵抗で思う様に機体が動いてくれない。
これが水中での怖い所。
地上とは違い、水の抵抗が機体に掛かって、地上とは勝手が違い過ぎるのだ。
更に最悪な事に、鮫の尾鰭の部分が開くのが見えた。
「ちょっ! バリアフィールド!」
とっさの判断で、実弾耐性のバリアを展開させたのと。
鮫の尾鰭から魚雷が発射されて、健太の機体魚人に当たるのと同時だった。
ドウン! ドウン! と爆発の音が連鎖する。
何とか機体へのダメージを軽減させたものの。
魚人のHPは2割以上も削られてしまった。
前面のモニターに視線を向けると、桂子、タクヤ、頼子の機体も、同じようにダメージを受けている。
* * * 視点:香織 * * *
モニター越しに映るのは、鮫の機体。
ただし、通常の鮫の機体よりは2回りほど大きい。
「レア機体?」
かなり遅めの速度で近づいて来る鮫を見て呟く香織。
「残念。 ハズレよ。」
突然、メインスクリーンに《NO SIGNAL》の表示が映し出されて女性の声が聞こえた。
「空。 映像を受け付けて。」
「了解しました。」
すると、画面に相手の顔が映し出された。
黒を基調とした、パイロットスーツ、黒いヘルメット。
スッと、ヘルメットの全面が上に上がり。 女性の顔が視認できた。
「初めまして。 人類側のプレイヤーさん。」
「初めまして。」
ピクンと眉を動かしながら、香織も答える。
* * * 視点:????&悠夜 * * *
「はっ! オリオンのサーバーレアだと言うから、どんな物かと思えば大した事ねぇな~。」
逃げ回る悠夜の機体。魔皇帝を見ながら言う。
『油断しないでください。
あの機体に搭載されているAIは、私達MUGENシリーズのプロトタイプです。』
パイロットの側に浮かびながら言う小さな少女。
「あぁ? お前たちの試作品だろ。
ポンコツの試作型。 問題ねぇ~よ。」
『・・・・』
生憎と、コードが解放されていないので、答えを返す事が出来ない。
良く勘違いされがちなのだが。
試作品=正規版の劣化版 と言う定義は間違っているとも言える。
確かに、試作品は正式採用前の段階での試作なのは間違っていない。
だが。 試作品から無駄を省き、手を加えての正式採用化である。
時には、その無駄な部分が正式採用を上回る事も在る。
それを、このプレイヤーは理解していない。
それに、データバンクに登録されている機体データを読む限りでは。
向こうのプレイヤーは明らかに手を抜いている。
* * * * * * *
健太たちと別れて、下方の敵を迎撃しに向かって。
目標の敵の鯱は即座に倒したのだが。
その後に、いきなり出てきた謎の赤い機体から逃げながら様子を見ている。
獣型でも、人型でもなく。
ステルス飛行機の様な機影。
最初は、何かのイベントか何かと思っていたのだが。
どうにも、謎の赤い機体の動きがオカシイ。
攻撃するのでもなく、こっちを追いかけまわしているだけ。
まるで、様子見でもしているかのように。
「レイ。 アレって、プレイヤーが乗っているのか?」
『・・・・』
普段なら、答えを返すレイが黙っている。
これは、規制コードに引っかかっている証だ。
「プレイヤーが乗っているんだな。」
言い方を変える。
『うん。 乗っているのはプレイヤーだよ。』
「そっか。 向こうと話が出来るか?」
『試してみるね。』
* * * * * * *
『マスター。 向こうの機体から通信が入って来てます。』
「あぁ? 通信だって?」
『はい。 どうしますか?』
「無視しろ。 それより攻撃を開始するぞ。」
『了解しました。』
「少しは楽しませてくれよ。オリオンのサーバーレアのプレイヤーさん。」
* * * * * * *
コクピット内にアラームが鳴る。
どうやら、向こうの機体がロックオンしたようだ。
『通信拒否。』
「みたいだな。 対魚雷発射!」
魔皇帝の脚部に設置された外部武装から小型の魚雷が発射されて、謎の機体の魚雷を迎撃する。
水中での水流が乱れて、爆発の気泡が視界を悪くする。
が。レーダーには映されているので問題はない。
魔皇帝を右側から敵の後方へ向かって移動させる。
勿論、敵にもレーダーはあるので、魔皇帝の位置は分かっているだろうが。
向こうは、如何にもって感じの飛行機型だ。
後ろを取ったら、こっちが有利になる。
魔皇帝が赤い機体の後ろに回り込んだ時だった。
気泡の中から、赤い色の人型の機体が魔皇帝に向かって飛び出してきた。
「くっ!」
咄嗟に、バリアシールドを展開して攻撃を受け止めたのは、反射で指が動いただけのマグレと言ってもいいだろう。
「へぇ。 なかなか、やるじゃないか。」
少しだけ、押し合う形と為った、接触回線で男性プレイヤーの声が聞こえる。
★ 接触回線:ゲーム用語 ★
*機体同士、もしくは武器と武器でも良い。が、接触している時にのみ出来る会話方法。
魔皇帝は、盾で攻撃を受け止め、そのまま後方への距離を取る。
相手の機体も、血撃破して来ようとはせずに、そのままの位置で魔皇帝を見ている。
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