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他のサーバーで
* * * スィーチ艦内 * * *
「悠夜!」
戦闘を終えて、戦艦の食堂に戻ると健太が声をかけてきた。
「おう。 お疲れ。」
振り向きざまに悠夜が言う。
「そっちもな。」
と、タクヤ。
「お疲れ様です。」
桂子。
頼子は軽く頭を下げる。
4人が椅子に座る。
「どうだった?」
健太達を見ながら悠夜が言う。
「いや~。 かなり手こずった。」
「です。」
健太と頼子。
「水中だと、勝手が違い過ぎました。」
と桂子。
「舐めたわ。」
タクヤ。
「そっか。 大変そうだな。」
「そうだなって・・・お前・・・。」
悠夜の言葉に、不満気に言い返す健太。
「いや、だって。 俺の機体、水中でも普段通りに動けるから・・・スマン・・・。」
さすがに、今の言い方は失言だったと思い謝る悠夜。
「なに、やっているの?」
そこに、香織が戻って来た。
「あ、香織さん。 いえ、水中での戦闘について話していたんです。」
「そう。 それより、聞きたい事が在るんだけど。」
香織も椅子を引いて桂子の横に座る。
「誰か、プレイヤー機と戦闘になった?」
香織の言葉に、悠夜以外がキョトンとなる。
「あぁ~。 多分、俺が?」
「疑問形?」
悠夜の言葉に、香織が聞き返す。
「話そうとしたけど、完全無視で話せなかった。」
「そう。 私の方は話せたわ。」
「香織さんもプレイヤーと戦ったのね。」
悠夜が言う。
「ええ。」
そして、香織は、自分が知り得た情報を話し出す。
運営側から、勧誘メールと存在して。
運営が選んだ、各サーバーのプレイヤー達にメールを送り。
そのメールで了承したプレイヤーは、各サーバーの敵対組織として戦えること。
「俺には来てないなぁ~。」
健太。
「同じく。」
悠夜。
「俺も。」
タクヤ。
「私もです。」
頼子。
「来てる。」
と、桂子。
「えっ!?」
桂子以外の5人の声が重なる。
「出撃前までは無かったのに。 今、確認したら来てた。」
微妙な表情で言う桂子。
桂子の言葉に、5人が慌ててメールを確認する。
「あ。 来てる・・・。」
悠夜が声を上げる。
そして、悠夜と桂子が、表示された内容を、皆に見えるようにモードを変えて表示する。
内容を訳すと。
1:運営が用意している機体のみ使用可能。
2:補助アイテム&回復アイテムは持って行けない。
3:運営が用意している武装だけ使用可能。
4:自機の詳細表示の無効化のオンとオフ。
5:CPUは持ち込み可能。
6:このメールを他人に譲渡する事が出来る。
と、以上。
なるほどねぇ~。
「で。どうする?」
健太が聞いてくる。
チラッと桂子さんを見る。
彼女も、悠夜の方を見ている。
「そりゃあ。 やられたら、やり返せでしょ?」
と悠夜。
「10倍返し! か。」
悠夜の言葉に、健太が悪そうな表情で言う。
「そこまで、いかないよ。 せいぜい倍返しだろう。」
肩をすくめながら言う悠夜。
「私は、遠慮したいかな・・・。」
まぁ、桂子さんは対人とかは苦手そうだし。
と、言うか。 基本優しいから、対人するのは嫌なんだろう。
「なら、その権利を私にくれないかしら。」
香織さんが、桂子さんに言う。
「ええ。良いですよ。」
そう言って、香織さんに譲渡申請をする。
* * * * * * *
「くそっ! なんで当たらねえんだよっ!」
先程、自分が乗っていて。 簡単に迎撃されてしまった赤い機体。
セイバーを追いかけまわしながら言う。
《PSの差よ。》
と言えないのが辛い所。
「おいっ! ポンコツっ! もっと、ちゃんとサポートしやがれ!」
『あの機体のプレイヤーは、先ほどのサーバーレアの機体のプレイヤーと思われます。
攻撃、防御、回避のパターン数が違い過ぎます。』
CPUのMUGENー001には、同じプレイヤーだと分かっているのだが。
なにせ、向こうの機体には、自分の試作型のMUGENー000が居るのだ。
さっきのプレイヤーと同じなのは把握できている。
「役に立たねえCPUだっ!」
役に立たないのではない。 役に立てなくされているのだっ! と。 声を大にして伝えたくなる。
いくら優秀なCPUとて。
パターンチップが多く組み込まれていないと、攻撃&防御と回避のパターンが少なくなっていくのだから。
逆に言えば。 パターンチップの数が多ければ多いほど、多彩な攻撃や防御に回避が出来る。
大体にして。 このプレイヤー【 ゼクス 】は、機体の性能の3割も使いこなせていない。
仮にも、サーバーレアの機体である《夜叉》に乗っているのにだ。
★ 機体名:夜叉 正式名称:SR-10AX ★
重力制御装置とは別の系統で制作された。
反重力制御装置で動く機体。
重力制御装置が、重力を操作して機体を動かすのに対して。
反重力制御装置とは、重力そのものから隔離させる。と、言う理屈らしい。
『ゼクス様。 機動性と運動性では勝っているのです。
このまま、相手のHPを削り切れば宜しいかと。』
「ちっ! もうちょっとマシなCPUは無えのかよ。」
* * * * * * *
「ここら辺が限界かな?」
『この機体じゃ、良くできた方じゃないかな。』
サーバーレアの機体相手に、半分近くもHPを削っているのだ。
機体性能の差を考慮すれば、出来過ぎだと言っても過言ではない。
機体に振動が走った。
* * * * * * *
「お帰り。 どうだった?」
「3戦。 2勝1敗。」
悠夜が倒されて戻ると、健太が早速聞いて来た。
「やっぱり、相手がプレイヤーだと勝手が違うな。」
「そりゃそうだろう。」
悠夜の言葉に、タクヤが言う。
悠夜と香織。
ミッションが終わると同時に、メール承認を済ませて、さっそく他のサーバーに敵役として遊びに行った。
1戦目と2戦目は、スワンサーバーで相手側のプレイヤーの邪魔に成功して、最後はカシオペアサーバーに。
そこで、悠夜が海中ミッションで撃墜したと思われるプレイヤーの駆る機体【夜叉】と遭遇。
結構粘ったが撃墜された。
「くっそおおう! 俺も、やってみてぇええ!」
健太が悔しそうに言う。
「掲示板で、問いかけてみたらどうだ? 桂子さんみたいに、苦手な人が譲渡してくれるかもしれないぞ?」
「おっ! その手があったかっ! 早速、書き込んで見る。」
そう言って、ログアウトする健太。
「忙しいやつだな。」
やれやれ。と言った表情でタクヤ。
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