別れの言葉(妄想コンテスト作品)

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 どうやら私は死んだらしい。 フワフワと空に浮いたまま、 抜け殻になった自分を見下ろしている。  どうして私は死ぬのだろうか。 病気だったのか、事故だったのか、 それすらもわからない。  ただ、眠るように横たわっている、 抜け殻がそこにあるだけだった。 「……あんたは重い病気を患っていた」  自分自身が覚えていない記憶を、 誰かが代弁している。 「ずっと妻になった女が看病していたんだよ」  へぇ、そうだったのかと思わず頷く。 「それなのに、あんたは感謝の気持ちを表すこともなかった……」  そんな風に文句を言われても、 夫婦だったら当然の行為ではないだろうか。 「あの瞬間、もしも《ごめんなさい》ではなく、 《ありがとう》と言っていたら……」  
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