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旺介は、うむ、と深くうなずいた。
それから傍観者だった叶多へと、ふとその目が移動してきた。
叶多は慌てて背筋を伸ばす。
「しかし」
旺介は奇妙な言葉の切り方をした。
どうやら叶多のことらしいし、こういう場合、得てしていいことではなく、叶多は身構えた。
「なんでしょう」
「この話に立ち会えるということは、彼女も分家出身なのかね」
「違いますよ。ただ、彼女には隠すべきじゃないと思っているだけのことです。負担をかけることになりますが」
即行で否定されたことに驚いていると、戒斗がちらりと叶多を向いて、どういう意味なのか、ふっと笑った。
釣られて笑ったものの、疑問は疑問だ。
もしかして本当に分家じゃなかったりして。なんていうばかげたことを考えた。
「もっともだな」
旺介は口を歪めて叶多と戒斗を見比べ、おそらく“可笑しそうに”した。
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