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紬希と一緒にいる時間が増えるとともに、仕事以外のいろいろな話をするようにもなった。
「佐藤さんは、彼女とかいるんですか?」
ある日、顧客との打ち合わせの帰り、打ち合わせと休憩を兼ねて入った喫茶店で紬希が質問してきた。
「彼女なんていないですよ。僕、ぜんぜんモテないし」
「えー、そうなんですか、意外だなぁ。絶対に彼女いると思っていましたよ」
「いないです。全然いないです!」
「ふふっ、そんな全力で否定しなくても。佐藤さんっておもしろいですね」
紬希は焦る僕を見て可笑しそうに笑った。
「そういう桜川さんは、彼氏いるんでしょ?」
「え、私?いないですよー。もう何年も」
「そうなんですか!?」
「そっ、そんなに驚かないでくださいよ。恥ずかしいじゃないですか」
紬希は恥ずかしそうに俯いて上目遣いではにかんだ。
その様子があまりにも可愛すぎて、僕も思わず大声を出してしまった自分が恥ずかしくなってしまった。
「あ、す、すみません。あまりにも意外だったので」
「いえ…毎日仕事ばっかりで、あまり恋愛の機会に恵まれなくて…」
「へ、へぇ…そうなんですか…」
なんだかぎこちない空気が流れ、その日は気まずいままに帰社の途についた。
「お前、桜川と付き合っているんだって?」
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