ごめんなさい

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 仕事も終わりかけた午後の四時。ようやく一段落ついての休憩がてら、オフィスに用意されている珈琲メーカーの前に設けられた簡易休憩所で、煮詰まった珈琲を飲んでいた僕は、不意に背後から投げかけられた言葉に飲みかけた珈琲を吹いた。 振り返れば、まじめな顔をした同僚の熊谷がいた。熊谷は、空気のような存在である僕の数少ない友人だ。 大柄でがっちりした体育会系の外見。性格は実直かつ誠実。ただ、少し頑固なところがある技術者肌の男だ。 「僕が桜川さんと!?なんでそんな話しが」 「この前、営業部の立川から聞いたんだ。あの二人、付き合っているってな。そうなのか?」 「そんなわけないだろう?桜川さんが僕みたいなのと付き合うわけないじゃないか」 「そうか。そうだよな…やっぱり単なる噂か」  熊谷は納得したようにウンウンと頷いた。 これはこれで、なんとなく腹が立つが、事実付き合っていないのだから否定しようがない。 「でも、お前は桜川のこと好きだろ?」  さらに直球で投げ込まれた容赦ない質問に、もう一度珈琲を吹いた。 「…ああ」  僕は短く頷いて答える。 熊谷は冷やかす風でもなく、これも納得したように頷いた。 「まぁ、お前はわかりやすいからな。聞くまでもなかったが。でもそれなら、今はチャンスだよな。桜川と一緒にいられる時間が多いだろう?ライバルを出し抜くには今しかないぞ」 「ライバルを出し抜くって…」  僕がしどろもどろしていると、熊谷はバンっと肩を叩いてきた。     
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