0人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前なぁ、桜川は人気あるんだぞ。営業部の連中だけじゃなく、サポート部の手塚や田村、それに奈良橋や亀田も。うちの部署だって、和田や野村なんかも何気にチャンス狙ってるしな」
「和田って、あいつ彼女いるだろう?」
「チャンスがあれば乗り換えるつもりなんだろう。お前もあれくらいガツガツいかないと、気付けば孤独老人だぞ」
「孤独老人って、俺まだ二十代だけど」
「時が過ぎるのなんてあっという間さ」
熊谷はそう言って笑った。
同い年のはずなのに、熊谷はどっしりとした安定感があって頼りがいのある男だ。
女子はこういう男を好きになるのだろう。
「はあ…熊谷はいいな。モテるヤツは羨ましいよ」
「お前だって、もっとこう、髪や服をビシッとキメて、和田みたく自信たっぷりにしてたらモテると思うけどな」
「僕が?よせよ、悪い冗談だ」
「いやいや、立川も隠れイケメンだって言ってたぞ。ただ、その存在感のなさがな」
「それは気にしてるんだよ…」
「はははっ、悪い悪い」
そんな話をしているところで、ドアがノックされた。
「失礼します」
紬希だった。
「あ、佐藤さん。ちょうど良かった。さっき、お客さんから連絡があって。ちょっと打ち合わせしたいんですけど、お時間大丈夫ですか?」
「え、はい…」
僕が返事をしようとしたのを、熊谷が遮った。
最初のコメントを投稿しよう!