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「桜川さん、この前、彼いないって言ってましたよね」
「え?はい。いないですね」
少し戸惑う紬希を前に、僕は勇気を振り絞った。
「あの………良かったら、僕とお付き合いしてくれませんか?」
「えっ!?」
驚く紬希。
「朝から何の話してんだって思いますけど、一緒にご飯食べて思ったんです。やっぱり僕、桜川さんのこと好きみたいで」
「あ、あの…私…」
「ダメですよね。やっぱり、僕みたいな空気みたいなヤツなんて」
「そっ、そんなことないです!佐藤さんは素敵な人です!」
「え?」
「あ…」
言ってしまってから、紬希の顔がかあっと紅く染まる。
「えーと…その…私も佐藤さんのこと、素敵だなって思ってて…誠実だし、一生懸命だし、優しいし…」
「じゃあ…?」
おそるおそる聞き直すと、紬希はコクリと頷いた。
「よろしくお願いします」
こうして、二人は正式に付き合うことになった。
一か月後、紬希と二人三脚で進めていた商品開発は、既に生産ラインに入っていた。
製品は、既に開発部の手を離れており、紬希が開発部を訪れることは、めっきりとなくなった。
僕と紬希が付き合っていることは、仲の良い数人を除いて秘密になっていた。
社内恋愛禁止というわけではないが、知られるといろいろとめんどくさい。
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